『Call Me By Your Name』
この映画のポスターを見たとき、一目で惹かれた。
美少年と美青年、青い空、黄色いクレヨンで描かれたタイトル。余計なものがなくておしゃれ。
周りからも「好きそう」「良い映画だよ」と言われてたし、メディアでも傑作と絶賛されてるし、キレイな映画なんだろうなと思ってた。
それからあらすじを読んで、正直「よくあるゲイ作品っぽいなあ」と思ってた。
美少年と年上の男性っていう組み合わせは大定番。この美少年はたいてい中性的。年上の男の方は、別に女がいる。(『皆既食』はこのパターン)
そこには古代ギリシャや日本の衆道的な「年上が年下に教えてあげる」関係があるのかなと思ってる。
最初の「キレイな映画」という印象はわりと早々に打ち砕かれた。
エリオ、インドアで大人しいタイプかと思いきや、夜遊びするしタバコも吸うし。
あと思ってたよりエロ多めだった(笑)
中盤のあのシーンなんて、間接的なんだか直接的なんだか分からないけど、今まで観た中で1番すごかった、、、。
青空から勝手に爽やかなかんじを想像してたけど超官能的でしたね。
「君の名前で僕を呼んで 僕の名前で君を呼ぶ」
タイトルになっているこのセリフ。
予告編を観ていなかったから、なんとなくエリオの言葉だと思ってたけど、これはオリヴァーの言葉。
ハンサムで明るく、村に来てすぐみんなの人気者になったオリヴァー。
エリオの家族から可愛がられ、女の子からはモテて、男の子からは羨ましがられる。
そんな姿はエリオの第一印象どおり「自信家っぽい」人間に見えた。
物語の後半、エリオの思いを知ってからの彼は、すごく弱々しく見えた。
たとえば、バレーボールのシーンで、オリヴァーがエリオの肩を触るところ。
モテる人特有の何の気なしのボディタッチだと思っていたけど、実はオリヴァーなりの精一杯のアプローチ。
エリオも恐らく「好きでもないのにベタベタ触ってる」と思ったから、振り払ったんじゃないかなあ。
それを振り払われたオリヴァーは、嫌われたと思って必死にエリオへの気持ちを断ち切ろうとしてしまうんだけど。
「もうやめよう」とエリオを止めたり、「後悔しないか」と何度も確かめる。
あのときの不安そうなオリヴァーの表情が忘れられない。切ないけど、キレイで、色気があった。でも女性的ってかんじではないんだよな。アーミー・ハマーすごい。
若いエリオではなく、大人になって、自分の思いが遂げられないと分かっているオリヴァーの言葉だからこそ、切実に響いた。
この映画において、2人をバイセクシャルと捉えるかどうかっていうのは悩みどころだなあ。
そもそも何をもってセクシュアリティを決めるのかっていう話になっちゃうんだけど。
オリヴァーの家庭が恐らく厳格で古風なのはエリオとの電話でしか語られないけど、オリヴァーはもっと前から男の人を好きだったんだろうなと、どうしても思っちゃうな。